私たち宝石に携わる者は通常10倍のルーペ(拡大鏡)を使います。

20倍や30倍のものもありますが焦点距離が極端に短くなるため、ピント合わせが難しく10倍に比べると目が疲れます。
また、倍率が高いものほどレンズの直径が小さくなるため、対象物の宝石の全体像が見れないことがあり不便です。
複数持つのならともかく、一つだけなら10倍のものがおすすめです。
ちなみにダイアモンドの鑑定書のクラリティ(内包物・キズ)のグレードも10倍のルーペで見たとしての評価です。

そのほか、ルーペを選ぶときに大切なことが二つあります。

一つは、ルーペで対象物を見た時に像に歪みが無いこと。
少しでも歪みがあると(直線がまっすぐに見えないと)カットの評価が正しく出来ません。
あと一つは、レンズが完全に無色透明であること。
ほとんどわからないほどの、ほんのわずかな黄ばみでもあれば、ダイアモンドのカラー鑑定は出来なくなります。
以上のことから、一般的にレンズはトリプレットという3枚のレンズを張り合わせて1枚にしたもので品質の良いものが画像の歪みが無く無色でカットや色を見るのに優れています。
2枚のレンズを張り合わせたダブレットや1枚レンズのものよりも高価ですが、それだけの価値はあります。




色々なメーカーからたくさんのルーペが発売されていますが、私どもで使っているのは上の写真の4点で、倍率はすべて10倍です。

一番上はニコンのレンズ径13mmのトリプレットで、私が年中持ち歩いているもので、世界に誇る日本の名品です。
軽量でケースの密閉性が良く、ホコリなどが入りにくいため携帯するのに優れています。

上から二番目はボシュロムというメーカーのレンズ径15mmの同じくトリプレットで、今から40数年前に私が18歳で入社した時に先代の社長から頂き、今も店内で検品や修理の時に使っています。
当時、プロ用の光学ルーペと言えばボシュロム以外は考えられないほど世界中で信頼されていたルーペで、今なお、世界のベストセラーの一つです。

三番目はI.L.Kというメーカーのレンズ径20.5mmのこれもトリプレットで、少し重いですがレンズ径が大きくて見やすいため、お客様に使っていただくこともあり、店頭で使用しています。

一番下はドマーニのレンズ径20mmのLEDライト付きで、1枚レンズですがライトを点灯させると明るくて細かいところまでよく見える優れたルーペです。

価格は定価で上の三点が一万円前後、LEDライト付きが4320円です。

ちなみに、私が普段持ち歩いているニコンとお店の奥で使っているボシュロムにはスイスアーミーナイフで一番小さなクラシックと言うモデルを付けています。
3cmほどのナイフとツメヤスリ、ハサミにピンセットとつまようじが付いていて、ナイフは小さすぎることもあって年に一度も使いませんが、ハサミは本当に良く切れて便利でしょっちゅう使っています。
特筆ものは極小のピンセットで、ルーペとの組み合わせによって、身体にトゲが刺さった時などに絶大な威力を発揮します。
以前は通勤途中や休日などにルーペを持っていないこともよくありましたが、突然どこかで誰かに、「ちょっと見て下さい」と言われた時に「今日はルーペを持っていないのでわかりません」と言うのが悔しいので、年中持ち歩くようになりました。

最後にルーペの使い方ですが、利き腕の方の手でルーペを持って、レンズがまつげに当たらないぐらいまで目に近付けます。
次にもう一方の手で対象物を持ってルーペの前1cmぐらいまで近付けます。
ルーペは固定して目から離さず、 前かがみになると顔の影で対象物が暗くなりますので、顔を起こしたまま、必ず対象物の方を動かして焦点合わせをします。
この時にルーペを持っている手の小指・薬指と対象物を持っている手の親指を接触させながら見ると対象物が固定されて、像が動いたり揺れたりするのを防げます。
また、ルーペをのぞいていない方の目をずっと閉じていると疲れるので両目とも開けておくようにとアドバイスする人が多いようですが、プロのように長時間ルーペを使うのでなければ、射的で的を狙うように片目を閉じてけっこうです。

ということで…
色々なものを拡大して見ると新しい世界が開けて本当に楽しいです。
興味を持たれた方はぜひマイルーペを購入されてはいかがでしょうか。
宝物になるかも知れません。


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