真珠を酢に漬けると溶けると言われています。
古代エジプトの女王クレオパトラが、真珠を酢(ワイン・ビネガー)に漬けて溶かして飲んだというのは有名な話です。
が、しかし、本当に真珠は酢で溶けるのか?と素朴な疑問を持って、15年ほど前に実験をしました。
真珠独特の輝きである真珠光沢の原因は真珠の核のまわりを取り囲む真珠層によるもので、この真珠層の主成分は炭酸カルシウムですから、酢の主成分の酢酸で溶けるのは当たり前のはずなんですが…。
それで、ある日、新品はもったいないので、傷が付いたりして痛んで廃棄することになった真珠を、グラスの中で酢に漬けました。
その結果…、真珠は溶けませんでした。
一日たち、二日たち、一週間たっても、真珠はまったく変化しませんでした。
どうなってるんだ!話が違うじゃないか!
ということで、種明かしをしますと、酢の主成分である酢酸の酸度は、クレオパトラが使ったとされるワイン・ビネガーで6%~7%、私達が実験に使ったのは日本国内では一般的な市販の米酢で4.5%前後。
どちらにしても、このぐらいの酸度では、真珠層の表面が顕微鏡レベルで変化することはあっても、溶けることはありません。
では、どのくらいの酸度なら溶けるのかと言うと、酸度10%ぐらいの酢に真珠を漬けると、表面から泡がたちはじめて溶けるそうです。
酸度10%と言うのは、漬物やソースなど加工食品の製造工場で原料として使われるもので、一般家庭ではまず使いません。
もし、クレオパトラが酸度10%以上のワイン・ビネガーを持っていて、真珠を溶かせたとしても、飲むのはちょっと無理だったのではないかと思います。
そんな訳で…
『クレオパトラが真珠を酢に溶かして飲んだ』という伝説は後世の作り話であった!
と…思います。たぶん。(^o^;)v

☆.。*:・°★.。*:・°