最近、若者を中心に、金属アレルギーを起こさないなどの理由で、タングステン製の指輪やペンダントなどが人気があります。

元素記号Wで表されるタングステンはスウェーデン語で重い石と言う意味があり、比重が純金とほとんど変らず、鉄の2.5倍、鉛の1.7倍ぐらいの重さがあります。
また、熱にも強く、鉄が1500度で溶けるのに対して、タングステンは3380度でやっと溶けます。
そして、特筆すべき特徴はその硬度で、金属でありながら、モース硬度ではダイヤモンドの10に次いでサファイア、ルビーと同じ硬度9の硬さを持っています。

このように硬くて磨耗せず、熱に強く、さびないタングステンは非常に丈夫な指輪やペンダントに加工することが出来るうえに、値段も千円台から1万円ぐらいと手頃なため、若い人の間で人気を呼び、ペアー・リングだけでなく、マリッジ・リングとして購入する人までいるようです。

しかし、指輪というものに、それほどの丈夫さが必要でしょううか?

長い間、宝飾の仕事をしていますと、時々、突き指などで指がはれ上がったり、あるいはむくんだりして、指輪が抜けなくなって困っているお客様や、もっと恐いのは、はれた指が指輪のせいで血流障害を起こして余計にはれあがり危険な状態になっているお客様が来店されます。
そして、そういう場合にはドイツ製のリング・カッター(指を傷つけずに安全に指輪を切断する道具)で指輪を切断して指から抜きます。
リング・カッターの刃はそれなりに硬い鋼(ハガネ)で出来ていますが、以前、ステンレス製の指輪をはめていて突き指をして指輪が抜けなくなり、指がただれて出血している人の指輪を切った時は、その一度だけで、ステンレス製の指輪を1本を切っただけでリング・カッターの刃がだめになりました。

最新のタングステン製の指輪をはめていて、もし突き指をして指がむくんで指輪がはずせなくなったら、どうするのでしょうか?
タングステン・リングを扱っている普通のアクセサリー・ショップやシルバー・ショップにタングステン・リングを切断する道具があるのでしょうか?
すくなくとも、一般の宝飾店や消防署にはタングステン・リングを切断出来るような道具は置いてありません。

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《ドイツ製リング・カッター》 ツノのような部分を指輪と指の間にさし入れて
ペンチと同じようなグリップ部分を握って丸ノコ状の刃を指輪に当て、回転させて
指輪を切断します。切り口はカミソリで切ったように綺麗です。


タングステン・リングをチェーンに通してペンダントとして使うのならともかく、指輪として使うのなら、それなりの覚悟が必要です。

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