以前、当ブログでタングステンの指輪について書かせていただきました。

【↓その時の記事の抜粋です】

元素記号Wで表されるタングステンはスウェーデン語で重い石と言う意味があり、比重が純金とほとんど変らず、鉄の2.5倍、鉛の1.7倍ぐらいの重さがあります。
また、熱にも強く、鉄が1500度で溶けるのに対して、タングステンは3380度でやっと溶けます。
そして、特筆すべきはその硬度で、金属でありながら、モース硬度ではダイヤモンドの10に次いでサファイア、ルビーと同じ硬度9の硬さを持っています。

----------中略----------

最新のタングステン製の指輪をはめていて、もし突き指をして指がむくんで指輪がはずせなくなったら、どうするのでしょうか?
タングステンリングを扱っている普通のアクセサリー・ショップやシルバー・ショップにタングステンリングを切断する道具があるのでしょうか?
すくなくとも、一般の宝飾店や消防署にはタングステンリングを切断出来るような道具は置いてありません。


詳しくは以前のブログを見ていただくとして、ざっと上記のような内容でした。

そして先日、リングがどうしても抜けなくて・・・という電話をいただきました。

切羽詰った様子の若い女性からで、タングステンリングが指から抜けなくなって、指がパンパンに腫れあがっている、前日の夜に消防署へ行ったが、消防署に備え付けのリングカッター(指輪を切る道具)では歯が立たず、逆にリングカッターの刃がツルツルになってしまった。
買ったお店に問い合わせても東京の発売元に聞いて見ますと言われたきり音沙汰がなく
その後病院にも問い合わせてみたが、どうにも出来ないので宝石店に相談してみてくださいと言われました。
というお問い合わせでした。

私はタングステンの特徴を説明し、リングカッターでもまったく歯が立たないので、
申し訳ございませんが、リングを切ることはできません・・・と、一度電話を切りましたが
【なんとかできないか・・・】と、タングステンリングについて調べていると
歯医者さんの使う歯を削る道具の中のダイヤモンド・ポイントという先に
ダイヤモンドの付いているものなら、水を出して冷却しながら簡単に切れるという記事を見つけました。
しかし歯科医院でリングを切ってくれるところなんてもちろん聞いたことがありません・・・

引き続き考えていると、
お客様に宝石の硬度の説明時にいつもお話しさせていただく例え話を思い出しました。


力を加えると、鉄の釘は柔らかいから曲がりますが、ガラスの棒は硬いから折れる(割れる)んです。


「そうだ、タングステンはサファイア・ルビーと同じで硬度 9なんだから、力を加えれば絶対に割れるはずだ。
でもパンパンに腫れあがった指にはまっているタングステンリングをどうやって割ったらいいんだろう?」
再度、調べてみると東広島市のベルズスクエアというアクセサリーショップのホームページで
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タングステンの指輪が抜けなくなったときにはリングカッターでは切ることが出来ません。
絶対に少しユルメを着けるようにしてください
最悪抜けなくなったりしたときにはハンマーで叩き割ってください。
硬いところに抜けなくなったリングをしっかりと設置させてハンマーで様子を見ながらたたいてください。
手を怪我する恐れもあるので慎重に少しずつコツコツとたたいてください。
ある程度のショックを与えるとパキッと割れます。
何度も同じところをたたくと割れやすいようです。
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という記事を見つけました。

コンクリートか厚みのある鉄板か、そんなものの上に手を置いてハンマーでたたけば
割れる直前まではタングステンリング自体が指を守ってくれるはずですし、
これならばと、もう一度、先程の女性に電話をかけ上記の内容を伝え
「最後に少し怪我をするかもしれませんが・・・
今の指の状態を考えると一度やられてみてはいかがでしょうか?」とお伝えし電話を切りました。

それから30分だったか1時間だったかたった頃、女性から電話がかかってきました。

女性 「先程から何度かお電話させて頂いている者なんですけど‥‥」
私  「どうでしたか・・・?」
女性 「教えて頂いたように少し勇気はいりましたが試してみるとリングが取れたんです!」
私  「良かった!!本当に良かったです!!」
女性 「これで安心してお正月が迎えられます!本当にありがとうございました!」

これほど心の底から 「良かった~!」 と思ったのはいつぶりでしょうか。


というわけで‥‥
東広島市のベルズスクエアさんには心からお礼を申し上げます。

アクセサリ-ショップ【BELL’S SQUARE】さんについて詳しくはコチラをご覧ください。

【補足】

指輪が抜けなくなった場合、一般の方が見て、到底抜けそうもないような状況でも
ご来店いただけましたら、大抵の場合は私どもで抜くことが出来ます。

今回の記事のようにハンマーで叩き割る、またリングカッターで切るというのは、
プロでも抜くことが出来ない状況で、そうしなければ指が壊死して取り返しのつかないことになるという時の最後の手段です。

また指輪が抜けなくなった時、自身で抜こうとし期間を置いてから連絡を頂く場合もごさいます。
しかし一度、石鹸で・・・、油をつけて・・・など試されても抜けない場合は
できる限り早くお問い合わせください。


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当店では指輪は常に着けたままではなく、できれば帰宅後に外して頂くことをおすすめしています。
(そうして頂くだけでも、着けたままの指輪と比べると摩耗度なども全然違います!^^)

しかし、マリッジリングなど家の中でも着けたままの方も多いかと思います。
その場合、【たまに指輪をはずす】という習慣をつけていただくだけでも
「指輪が少しきつくなってきたかな?」
「指輪のサイズ直しをした方がいいかな?」 (※サイズ直しが可能な材質に限ります。)
など、ちょっとした指の変化にも気付くことができ、
そして指輪が抜けなくなるという状況を少しでも避けることができます。^^


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